発達障害支援を専門とされる放課後等デイサービス児童指導員 まっつん様から体験談を頂きました。まっつん様は、「心理学」X「あそび」ブログ さいころボックス にて、療育のヒントをはじめ、子育て、日常に役立つ心理学情報を発信されています。 今回ポリエムから保育園用セットを提供し、実際に療育の現場 デイサービスで あそんで いただきました。
全体所感
ポリエムを試遊させて頂きありがとうございました。全体的な感想として,「放課後等デイサービスの現場でとても使いやすい」遊具でした。もともとブロックによる造形遊びが好きな児童が多いうちの事業所ですが,ポリエムも人気の遊具の一つになっていました。
以下,ポリエムを放課後等デイサービスの現場で使ってみての良かった点と気になった点をまとめました。
メリット
カラフルで子どもたちの創作意欲を刺激
色の種類が多く,子どもたちもその色に合わせてイメージを膨らませることができていました。緑のブロックでカエルを創ったり,青いブロックでプールを創ったりとその色から導き出されるイメージから,子どもたちも創りだす作品を考えることができたようです。
パーツの種類も多く,いろいろな形を造形できた
色のみでなく,パーツの種類も多いので子どもたちもイメージに合わせて組み立てやすかったようです。
パーツ同士が結構しっかり組み合わさるので,大きな作品も作りやすい
作品を大きくしていくと,ブロックの自重で崩れてきたりする場合がありますが,ポリエムはそれぞれが結構しっかりとハマるので大きめの作品も作りやすかったです。自重で崩れたりする場合,両手を使ってバランスを取るという事が苦手な子も少なくないため,作品作りに集中できず楽しく遊べなくなってしまう事があります。その点,ポリエムは安定感があり,子どもたちが集中して使うことができました。
はまる感触を気に入る子もいた
ポリエム同士をはめる時の合わさる感触を気に入った子もおり,感覚的にはめ込むことを楽しんでいた。また,きっちりとハマる感じが心地よい様で,自閉症の特性の濃い子もはめ込むこと自体を楽しんでいたようです。
柔らかく,角が丸いので安心して提供できる
放課後デイの場合,遊具を「投げてしまう危険性」をある程度考慮する必要があります。児童がパニックになった際に,近くにあった物を投げてしまう,危険を予知できずに投げてしまうなど,もちろんスタッフがその様な状況を予め防いだり,投げないことを利用児童も学んではいますが,それでも投げることを防げないケースがあります。その中で,柔らかい素材でできているポリエムは安心して提供できます。何より角がないことがとてもありがたいです!
水洗いができるため,衛生的に使える
放課後デイの利用児童は小学生から高校生まで(うちの事業所は小学生のみ)ですが,知的発達の遅れを持つ子など,遊具を口に入れてしまう子はまだ一定数います。そんな中で,水洗いができることは衛生面を保つためにも非常に助かります。また,ポリエムを実際に洗ってみて,乾きも良かったので時間があまりない忙しい現場でもとても使いやすいです。
ヨハンから>
ポリエムは、家庭用の洗濯機で洗濯・脱水ができるよ。乾燥機は使わないでね。3分脱水すれば、拭き取り不要だと、保育士さんが教えてくれたよ。
”○”にはめるという,遊び方が視覚的に分かりやすい
ポリエムは形を見て,すぐに遊び方がわかる,”○”にはめる,という事がわかりやすいので,知的な遅れを持つ子や自閉症の特性を濃く持つ子にも導入がしやすかったです。
キットパスと組み合わせて使うことで,「立体物に絵を描く」という練習ができた
ヨハンから> キットパスは、日本でいちばん大切にしたい会社といわれている日本理化学工業株式会社の安全で環境にやさしいマーカーです。キットパスは水で洗えるマーカーなので、水洗いできるポリエムと一緒に遊そぶと楽しいよ!
「立体物に絵を描く」という事は,片方の手で対象物を保持しながら,片方の手で筆記具を使うので,左右の手で異なる動きをすることになります。
発達障害を持つ子の中には,手先の不器用さが目立つ子も少なくありません。
しかし,ポリエムとキットパスを組み合わせることで,楽しみながら左右の手で異なる動きをする練習をすることができます。
「自分で作った作品に,自分で好きなように描く」ことは子ども達の創作意欲を刺激して,大きなモチベーションになります。
実際に,消しゴムを使う際に紙を押さえられずに困っていた児童の,「片手で押さえて,片手で操作をする」という練習にもなりました。
ブロックに絵を描ける=楽しい!
つくった作品に,さらにキットパスで描き足せることによって,ブロックだけでは表現できなかった作品ができ,子どもたちも喜んでいました。電車の形をポリエムで作り,目的地表示をしたり,ロボットを作り顔を描いたり,それだけで表現の幅はかなり広がっていたようです。
使っていて静か!
パーツ数の多いブロックなどを使う際には,その遊具から生じてしまう音が一つの悩みの種でした。うちの事業所には聴覚過敏を持つ子も数名おり,遊具のぶつかり合うガチャガチャした音は苦手な音の一つでした。ポリエムは遊んでいてあまり音が鳴らず,聴覚過敏を持つ子も隣で安心して遊ぶことができるようでした。
デメリット
キットパスは水洗いだけでは跡が残ってしまった
これはメラミンスポンジを使えばある程度綺麗になったのですが,水洗いだけではキットパスで描いた跡が残ってしまい2度洗いが必要でした。
ヨハンから> キットパスでポリエムの上に描いた跡が、水洗いやミラミンスポンジでは消えなかった場合、消しゴムでこすれば消えます。まっつん様にもお伝えいたしました。
細いブロックは,組み立てた後の取り外しが難しい児童がいた
しっかりとブロック同士が組み合わさるが故に,指先をあまり器用に使えない子には細いブロックは取り外しが若干難しかったようでした。もう少し全体的に太さがあると外す際は力が入れやすく扱いやすくなりそうです。
ストロー落とし,紐通しはうちの事業所ではあまり人気はなかった
ヨハンから> まっつん様に、ポリエムの穴を使ってストロー落としや紐通しの遊びをすることを提案しました。
ブロック自体を組み合わせて遊ぶ方が楽しいらしく,穴を使った遊びはあまり展開されませんでした。ただ,課題として「ストロー差し」に持っていくことは容易でした。普段の遊具を課題の教具としても使えるのは,子どものモチベーションを引き出すこともできるので助かる点です。穴の大きさが若干ブロックごとに異なる様で,するっと入るものと,かなり固く入りにくいものがありました。
遊びを通した療育的展開
組み合わせる=手と目の協応動作の練習
視覚的に「はめる」という動作がわかりやすい形状なので,比較的どの子も手に取りくっつけてみようと思える様でした。狙ったもの同士を組み合わせるというだけでも手と目の協応動作の練習になります。細長い形状のブロックは,組み合わせるもの同士を平行にしなければならないため,なおさら目で見る必要があり,「そろえる」良い練習になりました。
見本と同じものを作る課題がやりやすかった
ポリエムは,パーツの種類が多いため,少ないパーツでもいろいろな形が作れます。そのため,見本と同じ形をつくるという課題を,少ないパーツから始めることができ,課題の展開が非常にやりやすかったです。
ストロー差し課題
課題の設定時に,「どこまでやれば終わりになるか」が視覚的に分かりやすいという事は非常に大切な事です。
ポリエムを「ストロー差し」課題に流用すると,例えば3つの穴があるものなら,3本差せば完了,と課題に取り組む子どもも分かりやすいので,集中して取り組むことができます。
また,送って頂いた資料の様な何段かを重ねてストローを差していくことで,下の穴に入れようとより指先の微細な動きの練習を期待することが出来そうです。
色分けの課題はやはりわかりやすく,青のブロックに青のストローの様に課題設定が容易にできました。
キットパスで絵を描いたパズル課題
組み合わせたポリエムにキットパスで絵を描き,それをバラバラにしてまた組み立てるというパズルのような遊び方をしました。
出題者と回答者をそれぞれ子どもたちが持ち回りで行うことでとても盛り上がっていました。
平面のパズルと異なり,立体的な組み合わせになるため,より部分を見て全体を想像する力が養えそうです。
この遊びの途中で,平らに組み合わせたポリエムに漢字を書き,バラバラにするパズルを思いついた子がいました。これは漢字の部分の把握を促してくれそうです。キットパスとの組み合わせは大いに可能性を感じました。
まとめ
ブロック遊び全体に言えることでもありますが,指先の技巧性,両手の差異動作,想像力/創造力の発達が遊びの中から期待できます。
その中でもポリエムは扱いやすく,またキットパスと組み合わせることで,より楽しく,より発達的効果が期待できそうです。
何より,放課後等デイサービスという現場では,「柔らかさと丸さの安全性」,「材質による静音性」,「洗えて乾きやすい清潔性」はとてもありがたい特徴です。
放課後等デイサービスは,集団の中で遊ぶ場なので,この3点だけでも他のブロックではなく,ポリエムを導入する理由になると思います。
全体として,子どもたちの食いつきも非常によく,ポリエム,とても良い遊具でした!
ヨハンから> まっつん様 貴重なレポートをありがとうございました。